レッスンはアフターで
「それは体験を言い訳にした怠慢だ」


「そう。なら、あんたは傲慢」


どうしても、柚木と対面するといがみ合ってしまう。


大人げないと自分でも思うけど、止められない。


「やっぱり、二人は相性いいね!良かった!愛奈が、素をさらけ出せる相手がいて」


「おう、コイツも同じ。女と喧嘩出来るとはね。貴重な相手見つかってよかった」


完全に忘れてた。柚木と言い合いしているうちに、頭から二人のことが消えていた。


失態だ。言い合いすら、二人にはどこかのバカップルみたいに見えるなんて。


「とにかく、移動しよう」


丁度通りかかったタクシーに手を挙げた。


「“友膳”まで」


住所を告げたあと、そう言った柚木は、ニヤリと私を見た。


「知り合いの割烹料理の店。予約してあるから」


「すいません」


「いや。俺もいい体験させてもらったからね。女と喧嘩するなんてはじめて」


「厭味でしょう?私も、大人げないこと言われたのは、はじめてよ!」
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