レッスンはアフターで
「待って!」


話し出した声を遮ったのは、俺から一番遠くに座る苦手な女。


この時ばかりは、助かったと安堵した。俺自身が消化しきれていないことをベラベラ喋られるところだった。


「あなたはそれを話してラクになれるかもしれないけど、柚木はどうなるの?そういうことは、柚木が話したければ聞くけど、あなたが言っていいことじゃない。言いたくないことを目の前で話されたら、あなたは、また柚木に罪滅ぼししなくてはならなくなる。そういうことに気づきませんか?」


フッ、この女、よくわかっている。同族だからカンも鋭いっていうヤツだ。気づくと頬が緩んでいた。


「だーれが、人の名、呼び捨てにしていいって言ったんだよ!」


わざと、ニヤリとして言って。


心では感謝していること、この女なら分かってくれるだろう。


「はぁ!?拓斗って呼び捨てはよくて、苗字がダメって何?」


「あれー、いいの?そんなこと言って。俺、インストラクターであり、マネージャー。おまけに、大事な大事なお客様」
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