レッスンはアフターで
会社も辞めようと思っていたら、綾香が順一さんに相談して。順一さんから専務に話がいき、ひとまず部署替えで秘書になった。


「大丈夫?」


「うん。もう、好きじゃないから揺れたりしないよ」


言いながらも、動揺は隠しきれない。綾香の心配そうな顔のアップで危うく椅子から転げ落ちそうになるくらいには。


「まあ、吉良もスーツ着ていて、以前と変わらなそうだったから、忙しいとは思うよ。もし、また会社に来たら言うよ」


吉良義人(きらよしひと)。別れた旦那。名前だけ見れば、いい人っぽいが、この男、最低なクズ。


もし、もう一度会うことがあったら、平手打ちでもしてやろう。


とはいえ、会いたくない。


まだ、傷は癒えていないのかな。チクチクと未だに胸が痛む。当時を思い出して情けないやら悲しいやら。


「……愛奈?」


「うん」


「何かあったらちゃんと言いなよ」


「うん、ありがとう」


「暫くは、別行動ね。待ち合わせは、『SHIN1』ね。あそこなら、順一がいるし、もし居なくてもイケメンマネージャーがなんとかしてくれるだろうし」
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