レッスンはアフターで
「柚木がなんとかするわけないじゃん!ハハ、笑える。でも、ありがとう!」


「……愛奈、無理して笑わない!もっと、頼ってもいいんだよ!私も順一も愛奈の味方だということだけは忘れないで」


「うん、そうだね。ありがとう」


こんな時は、本当に惨めな気持ちになる。心配してくれていることも、気を遣って会わないようにしてくれたことも、何もかも分かってはいる。分かってはいるが、そうされる度に劣等感とか敗北感とかに押し潰されそうになる。


こんな気持ちを綾香に気付かれたくない。


もしも、もしも本当に綾香の危惧するようなことが起きたら私はどうするのだろう。


綾香が言うように柚木に頼る?
あり得ない!


柚木しかその場にいなくても頼れない。


柚木は過去を知らない。もし頼ったら説明しなくてはならない。


馬鹿にされるのもイヤ。
笑われるのもイヤ。
同情されるのは、もっとイヤ。


でも、そうは言ってられなくなったのは、そのすぐ後のこと。

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