レッスンはアフターで
順一さんが周りに頭を下げている。


私の目からは、我慢しきれずに涙がこぼれ落ちた。


順一さんに辛い事をさせてしまってごめんなさい。迷惑ばかりかけて、男一人自分で対処できなくてごめんなさい。周りの皆さん、楽しい食事を台無しにしてごめんなさい。


後悔ばかりで落ち込む私の横で、柚木から大きな溜め息が聞こえる。


この男にも迷惑かけちゃった。借りを作りたくない相手だったけど、そうも言ってられない。


「おい、河瀬愛奈。俺が、決着つけてやる。後で聞いてやる。だから、話せよ」


頭に重みが加わった。上から、強い力で押さえられている。


それは、縦にしか首を振らせない。横なんかに振ることが出来ない。


柚木なりの不器用な優しさだとすぐにわかった。


だから私もそれに応えたい。


落ちて行く涙を見ながら、話す決意を固めた。

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