レッスンはアフターで
「んー、ナイショ。先に言っちゃったら綾香に怒られる」


ニヤケ顔が煩わしい。


「勿体ぶるな、キモい。女に子供が出来たとかじゃあるまいし」


冗談のつもりが、動きが止まった順一を見て、当ててしまったとすぐに悟った。


「何で!?俺、そんなに分かりやすい?」


そうなんだよーと、俺の肩を叩くバカ順一。力加減をしれ!


痛みを感じて、立ち上がり窓から外を見下ろした。腕を見て時間を確認すれば、もうすぐマンツーマンの時間。


嫌なくせに他を指名しないので俺が指導することになっている、何故か突き放すことが出来ずにいる女。


その河瀬愛奈が、男と歩いているのが目に入った。


アイツ!俺とのトレーニングをさぼって、男とデートか!女なんて、所詮そんなもんだ。1ヶ月も前から組み込まれている予定より、目先の男。


よく知りもしない女に俺は、何を期待していたのか。


たった今ガッカリした自分を嘲笑った。
< 54 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop