レッスンはアフターで
――コンコン


ノック音で順一が返事をすると開けられたドア。


フロントの女が、鞄を持って入ってきた。


「オーナー。これ、河瀬さんがオーナーに渡して欲しいと。オーナーの婚約者に頼まれたものだと言っていましたが、いつも河瀬さんが持っているものなんですよねー。変だと思いませんか?それに、これを置いてすぐに呼び止めも聞かず出て行ってしまって。あ、マネージャーのアポもキャンセルしてって言ってました」


女は、順一から俺に視線をずらした。俺は、もう一度、振り返って、下を覗く。先程と変わらない状況に、

「どーせ男とデートだろ。鞄が邪魔になったから、預けたまでだ。ほっとけ!」


深刻な顔をしていた順一に、俺は、言い放った。


「愛奈ちゃんが持ってきたので間違いない?」


「はい。」


暫く考えていた順一が立ち上がった。


「ヤバイ。愛奈ちゃん助けなきゃ」


「え?」


女が呟いている隙に、俺は、走り出した。
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