幸せの花が咲く町で
◆優一
引き戻される時間
*
「……どうして……」
篠宮さんは、僕の声に振り返り、慌てて涙を拭った。
寝ているように言われたものの、やはり申し訳ないような気がして、下に降りると、篠宮さんが仏壇の前で手を合わせていた。
それだけならともかく、彼女の頬には涙の筋があった。
いやな気がしたわけではなかったけれど、見ず知らずの人の仏壇で涙を流すなんて、どうにもおかしな気がして、僕は思わず呟いていた。
「あ…堤さん……すみません。」
「いえ、拝んでいただいたのは嬉しいのですが……」
「実は……この方、お店の常連さんだったんです。
よくお店に来て下さってたんですが、確か……四年程前でしょうか?
突然、来られなくなって……
最初はお身体の具合でも良くないんだろうかって思ったんですが、その後もずっと来られないので、お引越しでもされたのかなって思ってて……
そしたら、まさかこんなことになってたとは……」
篠宮さんはそう言って、声を詰まらせた。
「そうだったんですか。
母は、植物が大好きでしたから……」
「はい、良く来ていただきました。
そして、良く一緒にお花の話をしました。
明るくて気さくな方で、本当に良くしていただいて……
私があのお店に来てから、最初に仲良くなったお客様でした。」
「……そうですか。
母がお世話になりました。」
「いえ、こちらこそ……
でも、どうして?
とてもお元気そうだったのに……」
それは聞かれたくない質問だった。
あれから四年の歳月が流れたとはいえ、この質問をされると、どうしてもあの時のことを思い出してしまう。
「交通事故だよ。
悪い車に、二人共はねられちゃったんだ。」
「えっ!」
僕が話したくないってことを知るはずはないのに、小太郎が僕の代わりに話してくれた。
「……ご存知ありませんか?
四年前……駅前で……」
「あ……」
篠宮さんは、あの事故に記憶があったのか、短く叫んで口元を押さえた。
「……どうして……」
篠宮さんは、僕の声に振り返り、慌てて涙を拭った。
寝ているように言われたものの、やはり申し訳ないような気がして、下に降りると、篠宮さんが仏壇の前で手を合わせていた。
それだけならともかく、彼女の頬には涙の筋があった。
いやな気がしたわけではなかったけれど、見ず知らずの人の仏壇で涙を流すなんて、どうにもおかしな気がして、僕は思わず呟いていた。
「あ…堤さん……すみません。」
「いえ、拝んでいただいたのは嬉しいのですが……」
「実は……この方、お店の常連さんだったんです。
よくお店に来て下さってたんですが、確か……四年程前でしょうか?
突然、来られなくなって……
最初はお身体の具合でも良くないんだろうかって思ったんですが、その後もずっと来られないので、お引越しでもされたのかなって思ってて……
そしたら、まさかこんなことになってたとは……」
篠宮さんはそう言って、声を詰まらせた。
「そうだったんですか。
母は、植物が大好きでしたから……」
「はい、良く来ていただきました。
そして、良く一緒にお花の話をしました。
明るくて気さくな方で、本当に良くしていただいて……
私があのお店に来てから、最初に仲良くなったお客様でした。」
「……そうですか。
母がお世話になりました。」
「いえ、こちらこそ……
でも、どうして?
とてもお元気そうだったのに……」
それは聞かれたくない質問だった。
あれから四年の歳月が流れたとはいえ、この質問をされると、どうしてもあの時のことを思い出してしまう。
「交通事故だよ。
悪い車に、二人共はねられちゃったんだ。」
「えっ!」
僕が話したくないってことを知るはずはないのに、小太郎が僕の代わりに話してくれた。
「……ご存知ありませんか?
四年前……駅前で……」
「あ……」
篠宮さんは、あの事故に記憶があったのか、短く叫んで口元を押さえた。