幸せの花が咲く町で




「おいしかったわぁ…本当にどうもありがとうね!」

「いえ、こちらこそ。」



今日は、私も一緒に夕飯をご馳走になった。
母にも、遅くなることは言って来たし、奥様と話したいことがあったから。



「奥様……」

「また~…昨日言ったじゃない。
夏美って呼んでって。
なんなら、なっちゃんでもいいよ。
あ、そういえば、篠宮さんは下の名前はなんて言うの?」

「え…あ…香織です。」

「香織さんか~…
じゃあ、これからは私も香織さんって呼ばせてもらうね。」

「あ…は、はい。」

「……それで、何?
さっき話しかけてたよね?」

「あ…その話なんですが……」



私は、夏美さんにあのお客様のことを話した。



「そうだったの……
母さん、お花が大好きだったからね。
そっか……
母さんも、香織さんと久しぶりに会いたかったのかもしれないね。」

奇しくもオーナーの奥様と同じことを言われた。
それと…夏美さんのその言い方に、私は小さな違和感を感じた。



「夏美さん……
あのお客様は、旦那様のお母様ですよね?」

「え……?
……あ!……だ、だって、優一のお母さんは私のお母さんじゃない!」



要するに、きっと夏美さんとあのお客様は、本当の親子のように上手くいってたってことだろう。



「夏美さんは、不思議とあのお客様と似てらっしゃいますよね。
だから、旦那様も夏美さんにひかれたのかもしれませんね。」

私がそう言うと、夏美さんは照れくさそうに微笑まれた。



「それと…あの、立ち入ったことをお聞きしますが……
旦那様は、あの事故になにか関わられてらっしゃるんですか?」

「優一がなにか言ったの?」

「ご両親が迎えに来ていて…って言いかけられて、具合が悪いって出て行かれたんです。」

「そう……」

夏美さんの顔は、少し強ばった表情に変わり、そのまま黙って下を向かれた。
< 113 / 308 >

この作品をシェア

pagetop