幸せの花が咲く町で
「香織さん…どうかしたの?」

「えっ!?
……い、いえ……なんでもありません。
ちょ、ちょっとショックなお話だったので……」

「本当に悔しいよ……
私だったら良かったのにって何度も思った。
なんで、優一があんな辛い想いをしなきゃいけないんだろうって……」



話せば良かったのかもしれない。
夏美さんだって、話し辛いことを話して下さったんだから、私も話せば良かったかもしれない。
でも、私なんかのこと…きっと、夏美さんは興味もないだろうし、今までもあんまり自分の事情を話したことがなかったから、やっぱり話せなかった。



夏美さんは本当に旦那様を愛してらっしゃるんだと思った。
そうでなければ、変わってあげたいなんてこと言えないもの。



それにしてもあの旦那様にこんな深い傷があったなんて……



「あ……」

「……どうかしたの?」

「今、ようやくわかりました。
あの時、旦那様が倒れられた意味が……」

「倒れたって……
風邪で具合が悪くて倒れたんじゃないの?」

「その前に小太郎ちゃんが、ちょっと危ない目に遭って……」

「危ないって……こたに何があったの!?」



そういえば、昨日、旦那様は風邪で倒れたっておっしゃってたみたいな……
言ったらまずかったんだろうかって思ったけど、もう遅い。
私は、昨日のバス停の前での様子を夏美さんに話して聞かせた。







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