幸せの花が咲く町で




「やっぱり、ごはんじゃないと食べた気がしないな。」

ピザを二枚も食べて、そんなことを言うなっちゃんに、僕は思わず失笑した。



「優一……明日はスーパーに買い物に行こうよ。」

「う、うん。」



それだけだった。
なっちゃんは、それ以上のことは何も言わずに、その後もごく他愛ない会話しかなかった。
本当はいろいろと言いたいことや聞きたいことがあったんじゃないかって思うんだけど、なっちゃんは僕にそういうことを訊ねることはなかった。



「パパ、これからずっとここにいるの?」

「小太郎…僕はパパじゃないよ。
僕はなっちゃんの弟。」

「ふぅ~ん…」


両親の一周忌の時も、小太郎は僕のことをパパと呼んだ。
あの時より大きくなって、喋る言葉もうんと増えたけど、まだこういうことはよくわからないようだ。



「パパはずっとここにいるよ。」

「なっちゃん!そんなこと言ったら、小太郎が混乱するよ。」

「いいの、いいの。
こた、パパがいなくて寂しかったんだもんね。
よかったね、パパが来てくれて……」

「うん!」


今の言葉で、なっちゃんはきっと離婚したんだろうって思った。
そういえば、以前、両親の家になっちゃんが遊びに来た時も、亮介さんは仕事で来られなかったって母さんが言ってたことを思い出した。

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