幸せの花が咲く町で




「パパ、これ、すっごくおいしいね!」

「本当ね。とってもおいしいわ。」



小太郎も篠宮さんも、そんなことを言いながら本当においしそうに食べてくれた。
味見はしていたけれど、バニラアイスと一緒に食べたらまた少し味も変わるかもしれない。
でも、それは悪い方ではなく良い方に変わっていた。
パリパリの皮がしっとりとして、りんごの酸味とバニラアイスの甘さがうまい具合に絡まってコクを出し、より一層おいしく感じられた。



「堤さん、これ……もしかして、餃子の皮ですか?」

「そうなんですよ。
テレビでお手軽に作れるアップルパイっていうのを見て、いつか作りたいと思ってたんです。
これだと、フィリングさえ作っておけば、あとは包んで揚げるだけですから。」

「なるほど……すごく良いアイディアですね。
それに…この盛り付けがとてもお上手ですね。
お皿も素敵だし、まるでどこかのカフェで食べてるような気分になります。」



なんだかとても良い気分だった。
お世辞だとわかっていても、やっぱり褒められると嬉しい。
またお菓子を作りたいという気持ちにもなって来る。



「あ…篠宮さん……
実は、僕、篠宮さんにお願いしたいことがあるんです。」

「私に……ですか?
どんなことでしょう?」

「実は……花のことを教えてほしいんです。」

「……花のこと?」

「はい。
篠宮さんが活けて下さった花…すごくいいなって思ったんです。
ただ、綺麗に活けられてるってだけじゃなく……癒されるっていうのか、元気が出るっていうのか……
それで、僕もあんな風に花を活けたいなって思って……」

「え……」



僕がそう言うと、篠宮さんは、驚いたような顔をして俯いてしまった。
なにかおかしなことでも言っただろうかと、自分の言葉を思い出してみたけれど、特に思い当たるものもない。
どうすれば良いのだろう?
僕は、次に何と言うべきかと、言葉に詰まった。



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