幸せの花が咲く町で




「なっちゃん…亮介さんのことだけど……」

「あんた…もうわかってるんでしょう?」

「うん、なんとなく……」

「多分、その想像はビンゴだよ。」

「えっ!?いつから?」

「もうずいぶん前から……」


……やっぱりか。
両親の葬儀の時は、一応、知らせたら、来てくれたとのことだった。
なっちゃんは、小太郎を保育所に預けながら、働いているらしい。



「だったら休んでなんていられないじゃない。」

僕は自分のことを棚に上げて、そんなことを言っていた。
僕だって、働かなきゃ生きていけないのに……



「大丈夫。
蓄えもちょっとはあるし、いざとなったらお金はあるから。
手をつけたくはないんだけど。」

なんでも、亮介さんは生活費は毎月送ってくれているらしい。
だけど、世話になるのがいやで、そのお金には手をつけず、自分で働いたお金だけで生活していたらしいんだ。
意地っ張りのなっちゃんが考えそうなことだ。



「母さん達には、亮介さんのことは……」

なっちゃんは小さく首を振った。



「心配かけたくなかったからね。」



なっちゃんらしいとは思ったけど、そんなこと、ずっと隠しておけるはずもないのに。



「それよりあんた……」

なっちゃんは言いかけて、僕をじっとみつめた。



「あ…良い、良い。
話したくないなら、話さなくても良い。
でも、話したくなったら話して。」

なっちゃんは相変わらずせっかちだ。
そんな風に言われたら、僕にはもう何も話せない。
僕自身、話したいのか話したくないのか、話すとすれば何を話したいのか何もわからなかったけど……

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