幸せの花が咲く町で




「あぁ、そう……
じゃあ、今から帰るね。」

次はスーパーにでも行こうかと思ったものの、荷物が多すぎてそれもなかなか大変そうで……
どうしたものかと思っていたら、なっちゃんから電話があり、花屋の人がついさっき帰られたとのこと。
それを聞いて僕は小太郎と家路に着いた。



「何?その荷物…!」

「うん…まぁ、いろいろとね。」

買って来たものを台所の棚におさめるのを見て、なっちゃんはくすりと笑う。



「今度はお菓子作りかぁ……」

「バレたか……」

「あんた、そこらへんのお母さん達よりすごいよ。
主夫の鑑だね。」

「……嬉しくないって!」

男の僕が働きもせず、家事だけをやってるなんて、誰が聞いたって情けない話だ。
以前はあんなに仕事が好きだったのに……
いつ、何が起きるかわからないっていうことは、母さん達のことでよくわかったけど、さらに、自分の身にも起こって余計にそれを実感した。



これじゃあいけないって焦る気持ちは常にあるけど、なっちゃんが常々焦らなくて良いって言ってくれるから、僕はついついその言葉に甘えてしまってる。
そして、今の主夫生活もけっこう楽しくて、やりがいのようなものを感じてる。

なっちゃんは良く言ってくれる。
あんたがいてくれるから、私は安心して働けるんだし、家も綺麗で、美味しいご飯も食べられるんだよ…って。



僕は本当に幸せ者だ。
そんなことを言ってくれる人なんて、きっとなっちゃんしかいない。
なっちゃんがいてくれなかったら、今の僕はどうなっていたかわからない。



「……優一、どうかした?
止まってるよ。」

「……なんでもないよ。」

「今夜のごはんは何?」

「まだ決めてないけど……」

「今夜もおいしいものお願いね!」

無邪気な笑顔……僕も思わずつられて微笑んだ。
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