幸せの花が咲く町で
「あ、そうだ……
明日、ホームセンターに行って、花台を買って来るよ。
このままにはしておけないからね。」

「そうだね。
あ、飾り棚みたいなのでも良いんじゃない?
下が引き出しになってるようなやつ……
そしたら、なにかと便利かもよ。
ね、優一……ここ、なにかもっと家具を置かない?
たとえば、小さめのテーブルとか……
それで……引き戸も開けとかない?
あ、あんたがいやだったら今のままでも良いんだよ。
すぐにってことじゃないからね。」



そう……この部屋はいつも閉め切ってあって……
それは、僕がまだ現実と向き合えなかったから。
でも、母さん達はきっと開けていてほしいと望んでるはず……
いつでも、僕達のことを見ていたいと思ってるはず……
そんなことはわかってるのに、僕はこの部屋をずっと封じ込めていた。
なっちゃんはそのことを知ってるから、ここをもっと居心地の良い場所にして、それと同時に僕の心を解放しようとしてるのかもしれない。



「飾り棚とテーブルと……
他はなにが良いかな?」

直接的な返事はせずに、僕はなっちゃんに訊ねた。
まだ、すぐに返事が出来るほど、僕の気持ちは固まってなかったから。



「そうだねぇ……
最初はそんなもんで良いんじゃないかな?」

「そう…どんな雰囲気のが良いかな?」

「それはあんたに任せるよ。
……それにしても、このテーブル……まだあったんだね。」

なっちゃんは、小太郎のテーブルを見て、懐かしそうに眼を細めた。



「これ、けっこう良く使ってたよね。
ベッドの上に置いて、ここでお絵かきとかよくしてた。」

「前の家はなんせ狭かったからね。」

「なっちゃんが散らかすからじゃない。」

「知~らない!」

なっちゃんは、おどけてそう言ってそっぽを向いた。
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