幸せの花が咲く町で




(なんで、こんなとこに弁当があるんだよ。)



堆く積み上げられた洋服の中から出てきたものは、レジ袋に入ったままの手つかずのお弁当。
もうずいぶん前のものらしく、いやなにおいを発していた。
少し動いただけなのに、息が切れ、どっと疲れていた身体には堪えるにおいだ。



「あぁーー!イライラする!!」

僕はそのあたりにあったものを蹴っ飛ばしたり投げ散らかした。
イライラしたせいか、動悸がして気分が悪くなり、僕はその場にうずくまった。



「優一…どうかした?」

物音に驚いたのか、なっちゃんが寝室から出てきて、心配そうに僕をみつめた。



「な、なんで、こんなに汚いんだよ!!
よくこんな所に住んでられるな!
あんた、それでも人間か!!」

精一杯の声で悪態を吐いたら、目眩がした。



「……ごめん。
あんたの言う通りだよ。」

そう言うと、なっちゃんは足元のゴミを拾い始めた。



なんだか無性に苛々していた。
それは、汚い部屋のせいだけじゃなく……
多分、自由に動かない身体に……そして、コントロール出来ない自分の感情に、苛々してたんじゃないかって思う。
でも、その時はそんなこと、少しもわからなかった。



そう、自分で自分が制御出来ないもどかしさ……


僕は、うずくまったまま、涙を流してた。
こんなことで涙が出るなんて……なっちゃんの前でこんなに泣いてしまうなんて、明らかにおかしい。
どこかにいるもうひとりの冷静な僕は、そのことに気付いていながらも、やはりほとばしる感情の波を抑えることは出来ない。



僕は壊れてるんだ……



そう思うと、悲しかった。
悔しかった…情けなかった。



そんな気持ちが、また涙に変わった。
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