幸せの花が咲く町で
その後は、篠宮さんと一緒に料理を作った。
考えてみれば、少し前まで僕は料理らしい料理も作れず、包丁も今みたいにうまくは使えなかった。
そんな僕が、料理を教えてるなんて……
そう思うと、なんだかおかしくて……僕は込み上がってくる笑いを噛み殺した。



「わぁ、良いにおい!」

「グラタンって、こんなに早くできるんですね!
もっとずっと時間のかかるものだと思ってました。」

篠宮さんは、小太郎都同様に、焼きあがったグラタンを見て瞳を輝かせた。
オムライスの卵は本当にうまくなかった。
だけど、破れたところにケチャップをかけたり、見た目の修正はすごくうまかった。
僕は、卵をうまく巻くコツを篠宮さんに教えた。



「あんまり時間をかけると卵が固まりますからね。
さ、今です。ごはんをいれて下さい。」

「は、はいっ!」



二度はうまくいかなかったものの、三度目にはとても綺麗に巻けた。



「すごく綺麗に出来ましたね!」

「僕、それが良い!」

「小太郎、これは篠宮さんのだろ。」

「いえ、これはぜひ小太郎ちゃんに食べていただきたいです。」

「やったーー!」



なんだかとても心が落ち着く時間だった。
特別なことをしているわけじゃないのに、小太郎も篠宮さんも弾けるような笑顔で……
それを見ていると、気持ちがとても安らいだ。
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