幸せの花が咲く町で
「ここなんです。」

篠宮さんが案内してくれたのは、地下街にあるインテリア製品と家具のお店だった。
外から見るだけでも、店内の広さがよくわかる。



「じっくり見たことはないんですが、ちらっとみたら素敵なものがたくさんあって、前から気になってたんです。
ただ、多少お高いかもしれません……」

「とにかく入ってみましょう。」

この店は、デパートの立ち並ぶ一番の繁華街からは少し離れていた。
だから、そこへ着くまでの間にもたくさんの店が軒を連ね……玩具の店があると小太郎の足が停まり、うちの近所にはない個性的な調理器具の店には僕と篠宮さんがひきつけられてしまい、その度に僕らの両手には荷物が増えていた。
家具屋のすぐ手前には雑貨屋があり、店の奥の方になんとなく良い感じのするエプロンが並んでいて、見てみたかったのだけど、篠宮さんと一緒だったのでそれは出来なかった。



「あ、これ、おしゃれですねぇ…」

「本当、素敵…!」

篠宮さんが言った通り、その店はとてもセンスの良い家具が揃っていた。
それを見ながら、僕は思った……おそらく、両親はこの店で新しい家の家具を買い揃えたのではないかと。
家にある家具と、どことなく雰囲気が似ているのだ。


ただ残念なことに、置いてあるものはそのほとんどが洋風のもので、僕が探してる和風の花台はなかった。
諦めて戻ろうとした時、店の奥の方で数人が家具を移動させているのが目に映った。
何気なく見ていると、その一角にあるのはどうやら和風の家具のようで、僕は思わずその場所に引き寄せられた。
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