幸せの花が咲く町で
私は特に目が悪いわけじゃないし、あの距離では間違えようがない。
残念だけど、あれはどう考えても夏美さんだ。



(でも……)



もしかしたら、同じ会社の同僚と、仕事の途中で何か買いに行くとか…あの時間だったら食事に行くとかで……
そう、夏美さんは開放的な性格だから、ちょっとふざけて腕を組んだだけ…とか、そういうことだってあるかもしれない。



(違う……)



あれは、ただの同僚って感じじゃなかった。
二人の間には、もっとこう…親密なものが感じられた。
それに、あの男性の身なりから考えると、同僚というよりは上司?
でも、年齢的には夏美さんと同じくらいに見えたけど……



(あぁ…もやもやする……)







それからの数日間、堤さんの様子にはこれと言って変わったことはなかった。
小太郎ちゃんのお迎えの後、少しお話をした日もあったけど、いつもとまるで変わらなかった。
日曜日には、夏美さんと堤さんと小太郎ちゃんの三人で出かけられてるのも見かけた。



(あれは見間違いだったんだろうか?)



そんな風に思うほど、堤さんのご一家には何の変化もなかった。
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