幸せの花が咲く町で




「あぁ…やっぱりぴったりですね!
すっごく素敵!」

「篠宮さんはこの配置どう思われますか?」

「どうって……とても良いと思いますよ。」

茶箪笥は、仏壇に向かって右手の壁沿いに置かれ、花台は仏壇の向かいに置かれていて、それは私が頭の中で描いていた通りの配置だった。



「ですよね?
なっちゃんが、花台は窓の傍が良いって言うんですよ。」

「陽が当たり過ぎるのもなんですし、風が吹いて倒れるってことも稀にあるかもしれませんから、私はやはりこっちの方が良いと思いますよ。」

「……そうですよね。」

堤さんは、嬉しそうに微笑まれた。
嬉しかったのは私の方だ。
だって、この部屋は私のイメージ通りの部屋になってたのだから。



「あ…食器も買われたんですね。」

「はい、先日、ホームセンターに買いに行ったんですけど、いまひとつ気に入るものがなかったんで、また三人で桃田まで行って来たんですよ。」

「そうなんですか……」

きっとそれは日曜のことだと思った。
そのことを聞いた途端、なにかがちくりと私の胸を刺した。



「そうそう……」

堤さんは、茶箪笥の中から湯呑を取り出し、私の前に差し出した。
ツリバナの描かれた可愛らしい湯呑だった。



「これ…良かったら、使って下さい。」

「これ……」

「それと、これも…良かったら、うちでお料理をする時に使って下さい。」

「なんですか?これ……」

「開けてみて下さい。」

包みをほどくと、そこには湯呑と同じ柄のエプロン入っていた。



「まぁ……」

そのエプロンは、以前、花瓶を見に行った時に見た覚えのあるものだった。
一番前にあったひなぎくのエプロンにひかれて手に取ったものの、お値段を見てすぐにそこから離れた。
多分、あのシリーズの一枚だと思った。



「先日、家具を買った後、あの近くの雑貨屋で見つけたんです。
なんだか、この花……篠宮さんっぽいなと思って……」

「え……そ、そうですか?」



私は嫌いじゃないけれど、ツリバナは皆に愛される花じゃない。
存在感も薄ければ、目をひくような派手さなんてもちろんない。



「あ、おんなじお花~!」

さっきまでリビングでテレビを見ていた小太郎ちゃんが、いただいた湯呑とエプロンを見て声を上げた。



「僕とパパは桜で、ママはひまわりなんだよ。
おばちゃんのはなんていうお花?」

「これはツリバナっていうのよ。」

そう答えた時、私の脳裏に浮かぶものがあった。
それは、ツリバナの花言葉……



『片思い』



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