幸せの花が咲く町で
花を触ってるふりをしながら、私はこぼれた涙を押さえた。



私はなんて愚かな女なんだろう……



大人になってからも誰かを好きになることなんてなくて……
初めて好きになった人には騙されて……



そして、その傷がようやく癒えようとしている今、好きになってしまったのが、奥様のいらっしゃる方だなんて……



私には1%の可能性もない相手なのに……



「あ、すみません。
僕が運びます。」

「あ、はい……」



繊細で、花が好きで、優しくて……
心に大きな傷を抱えたこの人……



そう……私は、この人にひかれてる。
噴き出した自分の気持ちに、もう嘘は吐けなかった。



(最低だ……
何で、私はこんなに馬鹿なんだろう……
どうして、手の届く人を好きになれないんだろう……)



本当はすぐにでも帰りたいほど、心の中は混乱していた。
だけど、ここから離れたくない気持ちも強くて……



私は無理に平静を装うしかなかった。

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