幸せの花が咲く町で




「やっぱり良いですねぇ……
篠宮さんに選んでもらうと、本当に間違いがないですね。」

「そんなことありませんよ。
堤さんのセンスが良いからです。」

今回は私に花を選んでほしいと言われたので、今の季節に良さそうなものを選んだだけなのに、そんなことにも喜んでいただけるのが嬉しかった。



「じゃあ、買い物に行きましょうか。」

「は、はい。」

「今日のメニューは決まってますか?」

「はい、あじのたたきと、なにか炊き込みごはんのようなものを作ってみたいんです。」

「和食ですね。
あぁ、残念だな。なっちゃんがいたら喜んだだろうに……」

常に夏美さんのことを考えられている堤さんの言葉が、ちょっと悲しかった。



「夏美さん……今日も遅いんですか?」

「ええ、最近、仕事が忙しいらしく、週に二度くらいは午前様なんですよ。」

「そ、そんなに!?」

「そんなに頑張って働かなくても良いのに……」



堤さんは、夏美さんのことを欠片程も疑ってはいない。
実際、本当に仕事なのかそうでないのかはわからないけど、夏美さんへの信頼感はとても強いのだと感じられた。



「そ、そういえば、先週の水曜日も夏美さんはお忙しいってことでしたよね?
あの日も遅かったんですか?」

「ええ、そうなんです。
あの日も0時過ぎてて、今までそんなに遅いことなんてなかったから心配しましたよ。」

「そ、そうですか……」



あの日……夏美さんがイケメンと一緒だったあの日……
そんなに帰りが遅かったなんて……それじゃあ、やっぱり、夏美さんは……


頭の中に浮かび上がるいやな想像に、私の鼓動は速さを増した。


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