幸せの花が咲く町で




(本当はどうなんだろう?)



堤さんにいただいたツリバナのエプロンを付けてお料理を教えてもらって、出来上がった料理を小太郎ちゃんと三人で食べて……
まるで、家族にでもなれたような気分になって、私は幸せに酔いしれた。


だけど、それは幻……
週に一度、しかも、夏美さんがいらっしゃらない時だけの夢の時間。
そんなことはわかってる。



(でも……)



もしも、夏美さんが堤さんを捨てて、あのイケメンの方に走ってしまったら……
そしたら、もしかして……



(……なんてことを!!)



私は自分の頭に浮かんだ悪い想いを打ち消した。
なんてことを考えてしまったんだろう……
……最低だ。



もしも、そんなことになったとしても、だからって堤さんが私のことを好きになんてなるはずがない。
こんな馬鹿で愚かで、見た目も良くないこんな私が、堤さんに愛されるはずなんてないし、愛される資格だってない。



それに、そんなことになったら、堤さんがどれほど傷付かれることか……
まだ、ご両親の死から立ち直れてない堤さんがそんなことになったら……



(だめ!絶対にだめ!)



脳裏をかすめた恐ろしい想像に、身震いした。



堤さんは繊細な方だし、夏美さんのことを100%信頼されてる。
もし、その信頼が裏切られたら、今の恐ろしい想像は現実になってしまうかもしれない。



(どうか、あの人と夏美さんがなんでもありませんように…!)



私にはそう祈ることしか出来なかった。




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