幸せの花が咲く町で




『あんたとあの人と子供の姿を見てたら、なんだか本当の家族みたいに見えたよ』



母さんの言葉が、頭の中をぐるぐる回ってた。
それは、とても嬉しいけれど、とても切ない言葉……



考えてみれば、堤さんはそれほど目を引くってタイプの人じゃない。
夏美さんとはご夫婦だってわかってたから特に違和感は感じなかったものの、似合うかどうかっていうと、やっぱりちょっと違う気もする。
その点、先日見たあの男性とだったら、すごく似合ってる。



(あぁ、またおかしなこと考えてる!!)



でも……
本当にあの人は、夏美さんの恋人なんだろうか?
そういえば、あの男性もそう若くはなかったから、もしかしたら、あの人も結婚してて……
って、いうことは、割り切った上でのW不倫…!?



まだ結婚もしてない私が言うのも変だけど、多分、私だったら不倫なんて絶対出来ない!
そんなことしてしまったら、ひやひやしてまともに家族と顔を合わせられなくなると思う。
それに、夫のことが大嫌いならともかく、好きだったらそんなこと絶対に出来ない!



でも……
世の中にはそういうことを平気で出来る人だっている。
夏美さんは、堤さんのことを大切に想われてるのは間違いないと思うのだけど……



(あ、そっか……)



堤さんのことを気遣うあまりに、却って疲れてしまったとか……
堤さんのことを相談してるうちに、その相手と親しくなってしまったとか……
そういうことなのかもしれない。
でも、理由はどうあれ、そんな関係が続いていたら、最後はみんなが泣くことになるんじゃないだろうか?



そんなのダメ!



堤さんをもうこれ以上、傷つけないでほしい。
小太郎ちゃんにも悲しい想いをさせないでほしい。



でも、そんなこと、夏美さんには言えないし……



(一体、どうすれば良いんだろう……?)





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