幸せの花が咲く町で




「じゃあ、二階でゴーヤーマン見ようよ!」

おやつを食べ終えると、二人は二階へ駆け上がって行った。



食器を流しに移すと、僕も二階へ上がった。
よそ様の子供を預かってる以上、いくら家の中とはいえ放っておくわけにはいかない。



二人はテレビの前に陣取り、緑色のヒーローに釘付けになっていた。
僕は少し離れた所に座って、新聞を読みながら二人の様子を見守った。



新聞の文字は頭の中を素通りしていく。
二人を見ながら、僕はぼんやりと考えた。



やがて、小太郎も大きくなり、当然、連れて来る友達も大きくなる。
そうなれば、僕のことをもっと詮索する者も出てくるだろうし、いやなことを言われることもあるかもしれない。
いやな想いをするのは僕だけじゃない。
小太郎だってそうだ。
そればかりかいじめにだって遭うかもしれない。
僕が「主夫」だということで……



ふと、そんなことを考えると、急に焦りのようなものを感じた。
やっぱり、僕が働かないと……
なっちゃんは家のことは好きじゃないから、仕事はやめないだろうけど、共働きの家庭ならたくさんあるから、とりあえず僕が昼間少しでも働いてれば問題はないだろう。



でも……大きくなれば、小太郎も気付くはずだ。
僕が本当は父親じゃなくて叔父だということを。



(その時、小太郎はどんな風に思うんだろう?)



もし、そのことで僕に反感を抱くようになったら……
そしたら、もう一緒には暮らせないかも知れない。
そうなったら、僕はまたひとりぼっちで……



その時、なぜだか篠宮さんの顔が浮かんだ。
ツリバナのエプロンを付けた、篠宮さんのはにかんだような笑顔が……



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