幸せの花が咲く町で




「へぇ……これは確かにお値打ち品だね。」

そう言いながら、なっちゃんは夜食のピザをたいらげた。



なっちゃんが帰って来てからも小太郎はスーパーの話を延々と話していた。
余程楽しかったらしく、幼稚園バスとは違う大きな市バスに載ったことから始まり、スーパーでの買い物のことなど、さんざん喋って、喋り疲れて眠ってしまった。



「話を聞いてたら僕も行ってみたくなったよ。
良かったら、今度行ってみない?」

「そうだね。
じゃあ、日曜にでも行ってみる?
あ……日曜は人が多いかな?」

「まぁ…大丈夫だと思う。
隣町だし。」

「そう……
じゃあ、今度の日曜に行ってみよう!」

なっちゃんは何事も決めるのが早い。



「もしかして、今度の土曜日もまた仕事?」

「うん…仕事って言うか、仕事絡みの付き合いなんだけどね。」

「そう……
あんまり無理はしないでね。
もしも、お金が必要なら……」

「違うって!
お金の問題じゃなくて、私は仕事が大好きなの、知ってるでしょ?
今までは小太郎のこともあったし、思いっきりは働けなかった。
でも、今はあんたがいてくれるから、安心して自由に働ける。
本当に感謝してるんだよ。」

「う、うん……」

その言葉は嘘ではないと思うけど、それでもやっぱり僕は後ろめたさを感じてしまう。



「最近はちょっとあんたに甘え過ぎてるかもしれないけど……
でも、日曜は家にいるようにしてるから、許してよ。」

「何言ってんだよ。
僕はただなっちゃんが無理をしてるんじゃないかと思って……」

「それはないから。
あんたこそ、もし、今の生活に不満があるならなんでも言ってよ。」

「僕はそんなのないよ。
今の暮らしに不安や迷いがないといえば嘘になるけど、家事をいやだと感じたことはないよ。
やってみて初めて、僕はこういうことが向いてるんだって気付いたくらいだし。
ただ、小太郎が……」

「ストップ!先のことはその時になってから考えれば良いんだよ。
今からそんなことばっかり心配してたら、あんた白髪が増えるよ。
先のことを考えるのは、せいぜい明日の夕飯のメニューくらいで大丈夫だから。」

「……わかったよ。」

そうだ。
まだ起きてもいないことを、今からあれこれ考えても仕方がない。
もっと楽観的にならないと……





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