幸せの花が咲く町で




(なっちゃんはどうしてあんなことを……)



自分の部屋のベッドに横になり、僕はぼんやりとさっきのことを考えていた。



もしかして、僕の気持ちに気付いたのか?
でも、気付いたとしても、あんなこと言うだろうか?
なっちゃんはがさつなようでいて、けっこう神経の細やかなところもあるから、もしも気付いたのなら、却ってあんなことは言わないはずだ。
篠宮さんは既婚者だ。
諦めるしかないことはなっちゃんだってわかってるんだから、僕が辛くなるようなことをあえて言ったりはしないだろう。



(なのに、なぜ……?)



考えたところでわかるはずもない。
直接なっちゃんに訊けば良いものを、訊く勇気がない。



本当に女々しい男だ。
自分自身に腹が立って、苛々はさらに募った。



まるで子供じゃないか。
篠宮さんと水曜日に会えないからって、いろんな妄想をしては勝手に動揺して……



これをきっかけに、もう篠宮さんのことは忘れよう……
そうは思っても、小太郎のお迎えの都合上、毎日会ってしまう……
でも、小太郎が小学校に通うようになったら、もうそういうこともなくなるだろう。
近くだから、たまに花を買いに行くことはあるだろうけど、篠宮さんに会う機会はいまよりうんと少なくなるはずだ。

そう思うと、寂しさで胸が締め付けられた。



でも、その方が良いんだ。
これはきっと運命……いや、もしかしたら、母さんが引き離そうとしてくれてるのかもしれない。
傷の浅いうちに離れて行くようにって、母さんが空の上で何か操作してくれてるのかもしれない。



きっとそうだ。
きっと、母さんがうまくやってくれるだろう。



(僕は、ただ、流れに身を任せておけば良いんだ……)


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