幸せの花が咲く町で
◆香織

転機





(私、一体、何やってるんだろう……)



水曜日の度に私はここへ来て、夏美さんを探してる。
あの二人が本当につきあってるかどうかを確かめようなんて考えたけど……確かめるまでもなく、そうに決まってるのに……

自分自身の馬鹿さ加減に、全身の力が抜けていく想いだった。



(今日でもうやめよう。
こんな馬鹿馬鹿しいことは……)



そう思い、ふと顔を上げた時……
私は遠くに夏美さんの姿をみつけた。
焦って私は物陰に隠れる。
速くなった鼓動を、深呼吸して無理矢理に落ち着かせる。
でも、夏美さんが近付いて来るのがわかると、なかなか落ち着くことは出来なかった。



幸い、夏美さんは私にはまるで気付いていない様子。
あの男性と、にこやかになにかを話してらっしゃる。
正面から見たあの男性は、本当に格好良い。
どこか外国の血でも混じってるのかと思えるような端正で甘い顔立ちだ。
年は夏美さんと同じくらいか……
スーツだけじゃなく、靴もバッグも胸元にちらっと見えるアクセサリーもおしゃれで高価なものに思える。



私は夏美さん達の後をつけた。
大勢の人の波にも少しも紛れない二人だから、見失うことはなかった。
階段を上がって、二人が向かった先は駐車場。
二人が車で移動するとなると、私も早くタクシーを拾っておかないと追いつけない。
だけど、周りにはタクシーなんて一台も走ってない。
どうしようと考えているうちに、鮮やかなブルーの車が走って来た。
車に疎い私には、それが何ていう車種かはわからないけれど、左側にハンドルがあるから外国の車だということだけはわかった。
二人は車の中でも楽しそうに何かを話して……
そのまま駐車場を後にした。



私はなす術もなく、車が去っていく様をただみつめているしかなかった。


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