幸せの花が咲く町で
*
「あ、堤さん!」
それから二、三日程経ったある日のこと……
その日は、珍しく篠宮さんの姿がなく、代わりに、両親のお参りに来てくれた女性……確か、山野さんとかいったあの人がいて、僕を不意に呼び止めた。
「すみません。
近々、もう一度、ご両親にお線香をあげに行きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「え……えぇ、それは構いませんが……」
「そうですか、ありがとうございます。
実は……」
山野さんの話は意外なものだった。
花屋を畳んで、ご主人の田舎に行って花農家をするとのこと。
そうなれば、もうなかなかこっちには来れないから、その前にもう一度……ということだった。
(だったら、篠宮さんは……)
最初に頭に浮かんだのはそのことだった。
この店が潰れたら、当然、篠宮さんは別の仕事を探すだろう。
今度の仕事がまた接客業だとは限らないし、この近くだとも限らない。
そしたら、きっと今までのようには篠宮さんには会えなくなってしまう……
僕は再び運命というものを感じた。
やっぱりそうだ。
母さんが……もしくは別の存在が、僕と篠宮さんを引き離そうとしている。
そんなおかしなことを直感的に感じた。
「残念ですね。
このあたりにはこちらのような良い花屋さんはないのに……」
僕は心の中の動揺を押さえ込み、極めて冷静にそう話した。
「すみません。堤さんには本当に長い間お世話になりましたね。
あ、では、前日にでもまたご連絡致します。」
僕は頭を下げ、小太郎と共にその場を離れた。
「お店なくなっちゃうの?」
「そうみたいだね。」
「じゃあ、お花も買えなくなるし、おばちゃんとも会えなくなるね。
これからどうするの?」
「……どうもしないさ。」
どうもしないのではなく、どうにも出来ない。
花は、種類は少ないものの、スーパーやホームセンターで買おうと思えば買える。
けれど、篠宮さんの代わりはどこにもいない。
(どんなに辛くとも、諦めるしかないんだ。)
「あ、堤さん!」
それから二、三日程経ったある日のこと……
その日は、珍しく篠宮さんの姿がなく、代わりに、両親のお参りに来てくれた女性……確か、山野さんとかいったあの人がいて、僕を不意に呼び止めた。
「すみません。
近々、もう一度、ご両親にお線香をあげに行きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「え……えぇ、それは構いませんが……」
「そうですか、ありがとうございます。
実は……」
山野さんの話は意外なものだった。
花屋を畳んで、ご主人の田舎に行って花農家をするとのこと。
そうなれば、もうなかなかこっちには来れないから、その前にもう一度……ということだった。
(だったら、篠宮さんは……)
最初に頭に浮かんだのはそのことだった。
この店が潰れたら、当然、篠宮さんは別の仕事を探すだろう。
今度の仕事がまた接客業だとは限らないし、この近くだとも限らない。
そしたら、きっと今までのようには篠宮さんには会えなくなってしまう……
僕は再び運命というものを感じた。
やっぱりそうだ。
母さんが……もしくは別の存在が、僕と篠宮さんを引き離そうとしている。
そんなおかしなことを直感的に感じた。
「残念ですね。
このあたりにはこちらのような良い花屋さんはないのに……」
僕は心の中の動揺を押さえ込み、極めて冷静にそう話した。
「すみません。堤さんには本当に長い間お世話になりましたね。
あ、では、前日にでもまたご連絡致します。」
僕は頭を下げ、小太郎と共にその場を離れた。
「お店なくなっちゃうの?」
「そうみたいだね。」
「じゃあ、お花も買えなくなるし、おばちゃんとも会えなくなるね。
これからどうするの?」
「……どうもしないさ。」
どうもしないのではなく、どうにも出来ない。
花は、種類は少ないものの、スーパーやホームセンターで買おうと思えば買える。
けれど、篠宮さんの代わりはどこにもいない。
(どんなに辛くとも、諦めるしかないんだ。)