幸せの花が咲く町で




「こら、待て、小僧~!
捕まえて小太郎鍋にしてやるぞ~!」



物騒なことを言いながら、なっちゃんは大げさな身振りで小太郎を追いかけ、小太郎は甲高い声を上げはしゃぎながら逃げまわる。



僕と二人で来た時には追いかけっこはしない。
小太郎が滑り台やブランコに乗るのを、僕は傍で見ているだけだ。

本当は小太郎も、そんな僕に物足りなさを感じてるのかもしれない。



(今度は追いかけっこでもしてやろう。)



「あ…堤さん……」

そんな僕の物思いを破ったのは、女性の小さな声だった。



「小太郎ちゃーーん!」

翔君が小太郎の所に駆け出し、小太郎も翔君に気付いて走るのをやめて手を振った。



「こんにちは。今日も暑いですね。」

「こんにちは。本当に暑いですね。」

会話はそこで途切れた。



「では……」

気まずかったのか、翔君ママは小太郎達の所へ行き、そこでなっちゃんとなにやら話して、お互いに頭を下げている。
そういえば、二人が顔を合わせたのは初めてかもしれない。
二人はそのままその場で立ち話をしていた。



「あ、小太郎!」

近くに駆けて来た小太郎を呼び止め、僕は伝言した。
用事があるので家に戻ってると、なっちゃんに伝えるように言いつけて、僕は公園を後にした。
特に用事なんてなかったけれど、そこにいても僕にはすることがなかったから。


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