幸せの花が咲く町で
「あ…あの…あの……
再婚とかなんとかって……私、よく意味が……」

「香織さん、ごめんね。
実は、優一は私の旦那じゃなくて弟なんだ。」

「え？……え……ええーーーーっ！！」

篠宮さんは、僕が今まで聞いたことのないようなおかしな声を上げた。



「こいつが旦那。
でも、うまくいかなくなって別居してたんだ。
そんな時に両親の事故があって……」

「僕が精神的に不安定になってしまったから、なっちゃんが僕をなっちゃんの家に呼んでくれて一緒に暮らすようになったんです。
でも、そこは三人で住むには狭くて住みづらくて……」

「それで、ここに越してきたってわけなんだ。
私、結婚しても姓は変わってないし……」

「俺が堤になったからね。」

亮介さんが横から口を挟んだ。



「周りの人にいちいち説明するのも面倒だから、夫婦のふりをしてたっていうか…周りが勝手にそう思い込んだだけなんだよ。
私、自分から優一と夫婦ですなんて言ったことは一度もないから……」

「そ、そんな……そんなこと……」

篠宮さんは真っ赤な顔をして、すっかり落ち着きをなくしていた。



「それで……友達の紹介で桃田の会社に勤め出してから、亮介と会ったんだ。
その友達、亮介とも知り合いだからその関係もあって……」

「優一君、俺、必死で夏美を説得したんだ！
もう一度やり直してほしいって。
今度こそ、夏美の言うことを聞くからって……
その甲斐あって、ようやく夏美も許してくれた……」

亮介さんはそう言って、拳をぐっと握りしめた。



「だいたい、亮介が私の言うことを聞かないからこんなことになったんだ。
でもいい気になるんじゃないよ！
あんたが私の言うこと聞かなかったら、今度こそ別れるからね！
別居じゃなくて、離婚なんだから！！」

「だから…今までだってさんざん聞いてきたじゃないかぁ～……」

亮介さんは情けない声で、なっちゃんに言葉を返した。



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