幸せの花が咲く町で
「それはそうと……
どうして、なっちゃんは篠宮さんと一緒なの？
しかも、篠宮さんは……その……」

「うん、実は……
優一、駅の向こう側に、河北洋二の店が出来たの知ってるよね？」

「うん、ワイドショーでも取材されてたからね。
確か、もうすぐオープンだったよね？」

「今日、オープンだったんだよ。
で、亮介が予約してくれてたから、行って来たんだ。
それで、その帰りに駐車場で亮介がいきなりチュウして来て……
で……篠宮さんに打たれた。」

「えっ！？」

意味が分からず、僕が篠宮さんを見ると、篠宮さんはまるでコメツキバッタのように、何度も何度も頭を下げた。



「ご、ごめんなさい！
私……夏美さんが不倫されてると思って……」

「ものすっごい力だったよ。
私、首がもげてふっとぶかと思ったもん。」

「ほ、本当にごめんなさい！！」

篠宮さんはぽつりぽつりと話してくれた。
僕と小太郎と三人で桃田に行った時、なっちゃんと亮介さんを見かけたこと。
その後も何度か二人を見かけたこと。
そのことで、篠宮さんがとても悩んでいたことを……



その話を聞いて、僕はあの時のことを思い出した。
あの時、篠宮さんの様子がおかしいと思ったのはやはり気のせいではなかった。
そんなことがあったからなんだと、ようやく得心した。



「それで……」

なっちゃんが何かを話しかけた時、篠宮さんの携帯が鳴った。



「はい。え？
あ、あぁ、うん、そう。
今から帰るから……」

それは家からの電話のようだった。
ふと視線を上げれば、時計の針はもう０時半を指していた。



「大変だ。もうこんな時間！」

「亮介、車で送ってあげて。」

「いえ、私…歩いて帰ります。」

「そうはいかないよ。
夜道は危ないから家の近くまで送るよ。
大丈夫！私も着いていくから……」

なっちゃんに促され、篠宮さんも渋々それを受け入れた。
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