幸せの花が咲く町で
「話は変わるんだけど、週末、亮介の家に泊まりに行っても良いかな?」

「泊まりにって……?」

「いきなりだとこたがびっくりするかもしれないから、まずは数日泊まってみて……要するに慣らしていきたいんだよね。
本当は海外に旅行に行きたいなんて言ってたんだけど、さすがにそれはこたにも刺激が大きいだろうからね。
パスポートだってまだ作ってないし。」

「そう……良いんじゃない?」

平気な顔で僕はそう言ったけど、心の中は少しだけざわついていた。
僕はこれまで何年もの間、一人暮らしをしてたんだ。
ほんの数日一人になるからって、それがなんだって言うんだ?



そう言い聞かせても、心のざわめきは落ち着かなかった。



大丈夫だ。
数日なんてあっと言う間だ。
僕は、いつも通りの生活をしていたら、それで良い。
毎日、そうやって同じことを自分自身に言い聞かせた。







「じゃ、パパ…行って来るね!」

「あぁ、気を付けてな!」

「じゃあ、優一……何かあったら電話してね。」

「……何もないよ。」



小太郎は今日がお泊りだとは知らずに出かけて行った。
ママのお友達のおじちゃんと、どこかに遊びに行くのだと思って……


僕は強張った作り笑顔で、三人を見送った。



あとしばらくすれば、小太郎やなっちゃんは本当にここからいなくなって……



僕はひとりぼっちになってしまう……



そう思うと、自分でも信じられないような大きな不安にかられた。



「行かないで!」

そう叫び出したくなる衝動を、僕は唇を噛んで必死に堪えた。


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