幸せの花が咲く町で
＊



（さて、何か食べるか……）



一人だから、手の込んだものを作る気にはなれず、僕は、例の大きなピザを焼いた。
年末にまた買ってきたものだ。



（これからはこんな大きなものを買うことはなくなるな。）



たいして興味のないテレビを見たりしたものの、遅々として時間は進まない。
誰もいない家の中は、広いだけに余計寂しさが募る。



篠宮さんでも夕食に誘おうか？
いや、だめだ。
誰もいない時に、よその奥さんを呼び出したり出来るはずがない。



頭の中を様々な考えがめぐっては消えて行き……
目の中を素通りするだけのテレビを、僕はただぼーーっとみつめて……



その時、僕のスマホがメールの着信を知らせた。
なっちゃんならたいていは電話なのに……
そう思いながら、見てみると、発信元は「flowershop-k@…」のメアド……篠宮さんの携帯からだった。



『良ろしければ、夕食をご一緒出来ませんか？』



それは、まるで僕の気持ちを読んだかのようなタイミングのメールだった。



『はい、喜んで。』

あまりにもタイミングが良かったため、すぐにそう返信してしまったものの、どうせならどこに行くか聞けば良かった。
そう思い、どこに行くか、何時に待ち合わせるか等の質問を打っていると、不意に玄関のチャイムが鳴った。



< 270 / 308 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop