幸せの花が咲く町で
「恥ずかしい話なんですが、私はそれまで恋愛をしたことはありませんでした。
たまに素敵だなと思う人はいましたが、それは言葉を交わすことさえないただの憧れのようなものでした。
私は、人というものを信頼してませんでしたから、結婚にも関心はありませんでした。
結婚なんかしていても、なにかがあればその仲は簡単に壊れてしまう。
今までの経験から、多分、そんな風に思いこんでて、希望が持てなかったんだと思います。
ですが……三十を越えた頃、急に焦りのようなものを感じたんです。
私はもう若くない。
これから先、恋愛の一つもしないまま、枯れ果てて死んでしまうのかと思ったら、なんだかすごく怖くなってきたんです。
そんなある日、会社の同僚がメル友サイトを通じて彼氏が出来たっていう話を小耳に挟みました。
メールなんかで本当に彼氏が出来るんだろうか?
どこか信じられない気持ちもありましたが、タダだし登録するのも簡単だし、興味もあって、私はみつけたメル友サイトに登録したんです。」
智君のことを話したら、きっと馬鹿な女だと軽蔑される。
それはわかっていたけれど、話し始めた私の言葉はもう止まらなかった。
まるでなにかに突き動かされるように話してしまう。
「そこで、私はある男性と知り合いました。
メールの印象はとにかく良くて、明るくて楽しくて気配りの出来る男性でした。
何度かメールのやりとりをするうちに、会いたいって言われて……
会ったらもうおしまいだろうなって思ったんですが、でも、会いたい気持ちも強くて……それで会いに行きました。
彼は、見た目もすっごく素敵な人で、話もうまいし優しいし……
しかも、私のことを綺麗だと言ってくれたんです。
もちろん、そんなのはお世辞だったんでしょうが、今までそんなこと言われたことがありませんでしたから、私はますます彼にひかれていきました。」
自分のことを話してるのに、どこか他人のことのようで……
そんなおかしな気分を感じながら、私は智君とのことを話し続けた。
彼のために洋服や小物を買っておしゃれをしたこと、そのうち、彼のお母さんのためにお金が必要になり、それを出してあげたこと……
今思えば、智君の話は不自然で、だまされてることなんてすぐにわかりそうなものなのに、当時の私は欠片程も彼を疑う気持ちはなかった。
ただただ、彼の並べ立てた甘い嘘を信じ続けて……
「私、その人に渡すお金を稼ぐため、仕事の他にバイトまでして、しかも、金融会社からお金を借りたり、挙句の果てには母さんの貯金を勝手に使ったりもして……本当に馬鹿ですよね。」
思い出すと、情けなさに涙がこぼれた。
堤さんは何も言わず、私にハンカチを差し出して下さった。
たまに素敵だなと思う人はいましたが、それは言葉を交わすことさえないただの憧れのようなものでした。
私は、人というものを信頼してませんでしたから、結婚にも関心はありませんでした。
結婚なんかしていても、なにかがあればその仲は簡単に壊れてしまう。
今までの経験から、多分、そんな風に思いこんでて、希望が持てなかったんだと思います。
ですが……三十を越えた頃、急に焦りのようなものを感じたんです。
私はもう若くない。
これから先、恋愛の一つもしないまま、枯れ果てて死んでしまうのかと思ったら、なんだかすごく怖くなってきたんです。
そんなある日、会社の同僚がメル友サイトを通じて彼氏が出来たっていう話を小耳に挟みました。
メールなんかで本当に彼氏が出来るんだろうか?
どこか信じられない気持ちもありましたが、タダだし登録するのも簡単だし、興味もあって、私はみつけたメル友サイトに登録したんです。」
智君のことを話したら、きっと馬鹿な女だと軽蔑される。
それはわかっていたけれど、話し始めた私の言葉はもう止まらなかった。
まるでなにかに突き動かされるように話してしまう。
「そこで、私はある男性と知り合いました。
メールの印象はとにかく良くて、明るくて楽しくて気配りの出来る男性でした。
何度かメールのやりとりをするうちに、会いたいって言われて……
会ったらもうおしまいだろうなって思ったんですが、でも、会いたい気持ちも強くて……それで会いに行きました。
彼は、見た目もすっごく素敵な人で、話もうまいし優しいし……
しかも、私のことを綺麗だと言ってくれたんです。
もちろん、そんなのはお世辞だったんでしょうが、今までそんなこと言われたことがありませんでしたから、私はますます彼にひかれていきました。」
自分のことを話してるのに、どこか他人のことのようで……
そんなおかしな気分を感じながら、私は智君とのことを話し続けた。
彼のために洋服や小物を買っておしゃれをしたこと、そのうち、彼のお母さんのためにお金が必要になり、それを出してあげたこと……
今思えば、智君の話は不自然で、だまされてることなんてすぐにわかりそうなものなのに、当時の私は欠片程も彼を疑う気持ちはなかった。
ただただ、彼の並べ立てた甘い嘘を信じ続けて……
「私、その人に渡すお金を稼ぐため、仕事の他にバイトまでして、しかも、金融会社からお金を借りたり、挙句の果てには母さんの貯金を勝手に使ったりもして……本当に馬鹿ですよね。」
思い出すと、情けなさに涙がこぼれた。
堤さんは何も言わず、私にハンカチを差し出して下さった。