幸せの花が咲く町で

「篠宮さん……なぜなんです？
どうしてそんなに泣かれるんです？」

「……つ、堤さんが……あまりに悲しいことを……おっしゃるからです。」

涙を拭いながら、私は懸命に答えた。



「……本当のことですよ。」

「本当のことでも言わないで下さい。
そんなことを言われたら、私はどうしたら良いのか……」

「不快な想いをさせてすみません。」

堤さんはどこか少し不貞腐れた様子で、小さく頭を下げられた。



「不快とかじゃないんです。
堤さんが、ご自分のことをそんな風に思われてることが辛いんです。」

「なぜです？
僕は……僕は本当に駄目な人間だ。
そんな駄目な人間なら、この世にいない方が良いって思うのは当たり前のことじゃないですか？」

「そんなことありません！
堤さんは駄目な人なんかじゃありませんし、堤さんは……夏美さんや小太郎ちゃんだけじゃなく……私にとっても……私にとってもあなたはとても大切な方です。」

「大切？からかうのはやめて下さい。
僕は……」

「からかってなんていません！！」

感情が高ぶり、私はつい大きな声を上げてしまい、堤さんは少し驚かれたような顔をされた。



「私は……あなたのことを知る度に、どんどんあなたにひかれていきました。
だけど、あなたには夏美さんも小太郎ちゃんもいる。
手の届く人ではありませんでした。
それ以前に、私は先程話した通り、馬鹿でどうしようもなく愚かな女です。
募る想いは抑えるしかなかった。
……それは本当に苦しいことでした。
でも、私が彼に騙された話をした時、夏美さんがおっしゃったんです。
人を愛する資格のない人間なんていないし、そもそも人を愛するのに資格なんていらないって。
その言葉に、私は戸惑いました。
……堤さんはどう思われますか？
本当にそうだと思われますか？
こんな私でも……本当に堤さんを愛していて良いと思われますか？」

堤さんは信じられないものでも見るような顔でじっと私をみつめ、そして、小さく首を振られた。



……終わった。
私の告白は見事に玉砕した。
やっぱり、堤さんも私のことを想って下さってるっていうのは、夏美さんの勘違いだったんだ。