幸せの花が咲く町で




テレビをつけ、ただその前にぼんやりと腰かけて……
目の前を素通りしていくだけの映像が勝手に流れて……



どのくらいの時間が経ったのもわからなかった。



ぼんやりとした僕を我に返してくれたのは、玄関のチャイムの音だった。



「……はい。」

「あ、堤さん!篠宮です。」

「え…?」



篠宮さん親子は夕方、うちに来ることになっていた。
玄関を開けると、外はすでに薄暗く、篠宮さんとその隣には年配の女性が立っていた。



「初めまして。
香織の母です。
この度は大変お世話になります。」

「あ、初めまして。
堤優一です。
こちらこそ、お世話になります。」



身長は母さんと同じくらいか、白髪の混じった髪は短く、篠宮さんにどこか面影は感じるものの、そっくりという程ではなかった。
ふと見ると、門の前にはタクシーが停まっていた。



「あ、荷物があるんですね?」

「はい、そうなんです。」

「じゃあ、早く入れましょう。
あ、お母さんは家の中に入ってて下さい。」

僕はそう言いながら、来客用のスリッパを差し出した。



(あ、スリッパも買ってこなくちゃ……)



そう思いながら、僕はタクシーの所へ向かった。
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