幸せの花が咲く町で




「まぁ、こんなものを……!」

次の日、僕と篠宮さんはホームセンターに行って、買い物をした。
スリッパやタオルといった細々したものの他に、僕は手すりを買い、それを寝室からリビングの方へ続く壁に取り付けた。



「どうですか?
これで少しは歩きやすくなりますか?」

「ええ、ええ。
とても助かります。
堤さん、本当にどうもありがとうございます。」

「椅子も買って下さったんだよ。
お仏壇に手を合わせる時に座れるようにって。」

「なにからなにまで、本当にどうもありがとうございます。」



ただの社交辞令かもしれないけれど、喜んでもらえるのはやっぱり嬉しい。
同居はまだ二日目だ。
この先どうなるかはわからないけど、出来ることならうまくやっていきたいと思った。



「それで、新しい花屋はいつから開店なんだい?」

「もうじきだよ。
改装も終わったし、あとは細々したことを片付けるだけ。」

僕は店のことはすべて亮介さんに任せっきりだったから、改装が終わったことも開店の日さえも知らなかった。



「確か、この近くなんだよね?」

「そうよ。なんなら明日見に行ってみる?」

せっかくお膳立てはしてもらったものの、僕はまだ仕事には前向きではなく、花屋にもあまり関心が持てなかった。
僕は花は好きだけど、花屋をしたかったわけじゃない。
そんな理屈を心の中で呟きながら、聞くとはなしに二人の会話を聞いていた。
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