幸せの花が咲く町で




「おやまぁ、ずいぶんとしゃれたお店だね!」

まさに、お母さんの言った通りだった。
少しだけ改装すると聞いていたけど、以前のごく平凡な花屋の雰囲気はそこにはもう微塵もなかった。
明るくおしゃれで、少し離れた所から見ると、カフェにでも間違いそうな雰囲気の店だった。
呆然とする僕を追い越して、篠宮さんは店の鍵を開けてくれた。



「ショーケースも大きくなったんですね。」

「はい、以前のは小さ目でしたから。
これで、以前より多くの花が仕入れられます。」

「あれ?
あそこは?」

奥の方には何か花ではないものが並べられていた。



「はい、あそこでは花やハーブから作られたアロマオイルやハーブティ、ポプリやそれに花のアクセサリー等を販売するんです。
夏美さんのアイディアなんですよ。」

「へぇ……」

なっちゃんまでもがそんな風に店に関わっていたなんて、僕は聞いたこともなかった。



「そして、ここが予約を受けたり、お客様に待っていただく間、寛いでいただくスペースです。
このテーブルと椅子も、夏美さんが選ばれたんですよ。
ほら、あの桃田の家具屋さんで……」

「そうだったんですか。」

「そして、こっちがスタッフルームです。」

そう言って、篠宮さんは扉を開いた。



「以前は、スタッフルームなんてないに等しかったので、本当にありがたいです。
ここのことも亮介さんがいろいろと聞いて下さって、使いやすいように考えて下さったんですよ。
ほら、この棚には荷物が置けますし、ミニキッチンもあるんですよ。
ここでお茶を沸かして、お客様にお出しすることも出来るんです。
これからは突然お客様がいらしても、焦ってお弁当を隠したりしなくてすみます。」

僕が知らない間に、皆が店のことを着々と進めてくれていたことに、僕は驚き、戸惑った。
僕はたいしてやる気もなく、感謝をすることはおろか関心を抱くことさえなく……
なのに、その間、皆は僕のために…そして、この店のためにずっと動いていてくれたんだと思うと、何とも言えない気分になった。


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