幸せの花が咲く町で
仏壇があるだけの小さな部屋に、僕は掃除機をかける。
狭いから、掃除はあっという間だ。
掃除機を部屋の片隅に置き、僕は仏壇の前に腰を降ろした。
仏壇の中には、同じような顔をして微笑む父さんと母さんの写真。
まるで、兄妹みたいにそっくりだ。



「父さん…母さん…
今日はとても良い天気だよ。
小太郎が、『洗濯日和だね』って言ってたよ。」



僕は、ごく普通の顔をして、仏壇にそんなことを話しかける。
それだけ言ううちに、喉が詰まって、鼻声になってしまう。
あれからもう四年も経つっていうのに、僕の時計はまだそんなには進んでいない。
こんな風に父さん達と向き合うと、一瞬で僕はあの頃に引き戻されてしまう。
泣いて泣いて……目が潰れてしまうかと思うほど泣いて悔やんだのに、涙はまだ枯れ果ててはいない。
でも、なっちゃん達の前では泣かなくなっただけ、まだましになった方だ。



「父さん、そっちの暮らしはどうだい?
釣りする所なんてあるのかな?
母さん…花壇の世話はいつもやってるから、安心しなよ。
あ…今年は紫陽花を植えようと思ってるんだ。
白い紫陽花をね……」

そこまで話すと、胸がいっぱいになり涙がこぼれた。
もう泣かないと決めたのに、やっぱりまだだめみたいだ。

なっちゃんのおかげでずいぶん心は軽くなれたけど、それでもやっぱり僕は自分自身をまだ許せないでいる。



(……許せるはずがないよ……)



いまだ忘れることの出来ない、あのシーンが頭の中に広がった。
宙を舞う花柄の傘……それがころころと転がって……











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