幸せの花が咲く町で
*
智君からの連絡がなくなって数ヶ月……なんとか同僚達の目も上手く取り繕い、借金の返済もあと少しとなった頃のことだった。
「ねぇねぇ、最近の篠宮さんってちょっとおかしいと思わない?」
トイレの個室に入っていた時、数人が入ってくる物音がして、岡村さんが私のことを話しているのが耳に入った。
私はそのまま、彼女達の会話に耳をそばだてた。
「おかしいって…なにが?」
「あなた、気付いてないの?
あの人、最近随分痩せたじゃない?
仕事中にもぼーっとしてることがよくあるし……」
「篠宮さん、彼氏のためにダイエットしたんじゃないの?」
「あなた達、本当にわかってないのね。
あれは、ダイエットの痩せ方じゃないわ。
あの生気のなさ……身体か精神的に疲労してる証拠よ。」
岡村さんはやっぱり気付いてる……
私は身体が震えだすのを感じた。
「あ、そういえば……」
おそらく、中西さんだと思われる声がそう言って手を打った。
「なになに?」
「実はね……こないだ、中央町の居酒屋で、篠宮さんらしき人をみかけたの。」
「それが、何なの?
あ!篠宮さん、彼氏と一緒だったとか?」
「そうじゃないの!
篠宮さん、お客として来てたんじゃなくて、店員として働いてたの!」
「えーーーっ!!」
みんなの驚きの声が揃った。
私は個室の中で、身が縮まる想いを感じてた。
「篠宮さん、なんでバイトなんか?
ねぇ、それって平日?」
「うん、確か金曜日だった。」
「見間違いじゃないの?」
「う~ん…確かに絶対に篠宮さんだったとは言えない。
あの時、私も酔ってたし、入口からのぞいたらお客さんがいっぱいだったから入らなかったし……」
「なぁ~んだ……」
そう言ったのはきっと多田さんだ。
「でも……十分、ありうると思うよ。
以前、篠宮さん言ってたんだ。
彼氏は松川瞬似のイケメンだって。
まぁ、その時はあばたもえくぼだってやつだろうと思って本気にはしてなかったけど、もしも、本当にイケメンだったら……
例えば、騙されてて……篠宮さん、その男に貢ぐために必死で働いてるとか……」
岡村さんの的確な推測に、私は気を失いそうだった。
智君からの連絡がなくなって数ヶ月……なんとか同僚達の目も上手く取り繕い、借金の返済もあと少しとなった頃のことだった。
「ねぇねぇ、最近の篠宮さんってちょっとおかしいと思わない?」
トイレの個室に入っていた時、数人が入ってくる物音がして、岡村さんが私のことを話しているのが耳に入った。
私はそのまま、彼女達の会話に耳をそばだてた。
「おかしいって…なにが?」
「あなた、気付いてないの?
あの人、最近随分痩せたじゃない?
仕事中にもぼーっとしてることがよくあるし……」
「篠宮さん、彼氏のためにダイエットしたんじゃないの?」
「あなた達、本当にわかってないのね。
あれは、ダイエットの痩せ方じゃないわ。
あの生気のなさ……身体か精神的に疲労してる証拠よ。」
岡村さんはやっぱり気付いてる……
私は身体が震えだすのを感じた。
「あ、そういえば……」
おそらく、中西さんだと思われる声がそう言って手を打った。
「なになに?」
「実はね……こないだ、中央町の居酒屋で、篠宮さんらしき人をみかけたの。」
「それが、何なの?
あ!篠宮さん、彼氏と一緒だったとか?」
「そうじゃないの!
篠宮さん、お客として来てたんじゃなくて、店員として働いてたの!」
「えーーーっ!!」
みんなの驚きの声が揃った。
私は個室の中で、身が縮まる想いを感じてた。
「篠宮さん、なんでバイトなんか?
ねぇ、それって平日?」
「うん、確か金曜日だった。」
「見間違いじゃないの?」
「う~ん…確かに絶対に篠宮さんだったとは言えない。
あの時、私も酔ってたし、入口からのぞいたらお客さんがいっぱいだったから入らなかったし……」
「なぁ~んだ……」
そう言ったのはきっと多田さんだ。
「でも……十分、ありうると思うよ。
以前、篠宮さん言ってたんだ。
彼氏は松川瞬似のイケメンだって。
まぁ、その時はあばたもえくぼだってやつだろうと思って本気にはしてなかったけど、もしも、本当にイケメンだったら……
例えば、騙されてて……篠宮さん、その男に貢ぐために必死で働いてるとか……」
岡村さんの的確な推測に、私は気を失いそうだった。