幸せの花が咲く町で




「皆さん、お疲れ様です。
一休みして下さいね。」


中年の女の人が大きな荷物と共に店の中に入って来られて、皆にお弁当とお茶を配ってくれた。
私はそれらを受け取ったものの、食べて良いものか、そもそもなぜこんなことになったのかもわからないでいた。



「あ、お父さん…パートの人、別のところが決まったから来られなくなったってさっき連絡が……」

「何言ってんだ、パートさんならなら来てくれてるよ。」

「えっ?そんな……」

「ほら、この人だよ。」

男の人は、私のことを指さした。

どうやら、私は今日から来るパートさんと間違えられていたらしい。



「あ…あの、私……さっき、あなたが封筒を落とされたので、それを拾って渡したらこんなことになって……」

「えっ!?封筒って……あれ、履歴書じゃなかったの?」

男の人は、さっきの封筒を取り出し、中身を見て苦笑された。



「ごめん!てっきり、今日から来ることになってたパートさんが履歴書を持ってきたんだと思ってた……
三十代の女性って聞いてたから……」

「い、いえ、どうせ暇だったんでそんなことは構わないです。」

「暇って……じゃあ、君、今働いてないの?」

「は、はい。現在、求職中で……」

「だったら、ぜひ、うちで働いてくれないかな?
これもなにかの縁じゃないか。」

私は、今まで通り、事務をするつもりだったから、ちょっと戸惑ったけど……
じっとしてるより、身体を動かしてる方が今の私には合ってるように思えた。
すぐには返事が出来なかったけど、とりあえず午後からの仕事は手伝うことにして、私はいただいたお弁当を口に運んだ。








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