コイスルオトメ。
「え?ほんとに?」
うん、と嬉しそうに答えながら、優奈はあたしのチャリに腰掛けた。
優奈は大きなラケットを抱えると黙り込んだ。
チャリ貸してあげるんだから自分でこぎなさいよ、と思ったけど言わない。
っていうか言えない。
風が少し強くなってきて、制服の裾がひらりと風に舞う。
「優奈、おもい。」
あたしが愚痴を言えば、
「ゆうなが重いんやないの。ラケットやて」
と言ってむくれる。
優奈は前髪をヘアピンで留めた。
風でセットが崩れるのが嫌みたい。
……家に帰るだけなのにね。
明日から美桜とは帰れないからぁー。
ごめんねぇー。
と、ゆるく話す。
甘ったるい高い声が耳に残る。
全然謝ってないじゃんか。
ゆるくウェーブのかかった栗色の髪を整えるとあたしの肩を叩く。
出発していいよのサイン。
また命令ですか?
ほんと我儘なんだから……。
だから
あたしは優奈のことが嫌いだ。