エンビィ 【完】
咎める百瀬の視線と声を背中に聞きながら、目的地はないのに彷徨う足取りは何かを無意識に探していた。
ふざけないでよ……なにが“売られた喧嘩は丁重にもてなすのが私のモットーですの”よ……っ、
ならあたしからの挑戦を受け止めてよ。
まだ始まった……いや始まってすらいないのに……
なにしてんのよっ…。
――…―?
―…――?
そんなの…、
「――――オイ!アイツ出せよ!」
突然に。
夕焼け空を切り裂くような怒声が木霊した。
まわりが騒めく。
色んな方向に向けられていたベクトルが一点に集まっていく。
そこからチラリと見え隠れした、
目立つ色に。
あたしは息がつまった。
「いった…!」
「ぶつかったら謝るくらいしなさいよ!」
震えていた足が、ふらふらと勝手に歩む。
人にぶつことを厭わず、ただ確認したくて、ソレに近づく。