エンビィ 【完】
「嫌だわ……若葉さん。教育もなにも……あたしの執事は、あなたがこれ以上恥をかかないようにと、そう気遣っただけじゃあないの。それをそんなに怒鳴るだなんて……ましてやここは…ねえ…?若葉さんこそ、どういった教育をうけてらっしゃるの…?」
なるべく小声で嘆く。
そうすれば、
若葉を憤慨したような表情をみせ、足元を一瞥して歯噛みしながら踵をかえした。
「愛嬌しか取り柄のない顔が台無しね」
家に帰って執事か家族にでも泣きつくのかと思えば、早速笑いがこみ上げてくる。
若葉なんて眼中にもない。
全然大したこともない女。
ただ父親も母親も家柄がいいってだけでちやほやされているってだけの女。
それはアイツも同じ。
生まれ持った地位と美貌。
それは努力もせずに手に入れたもの。
だから―――勝ち逃げは許されない。