エンビィ 【完】
―――黒のドレス―――
白に近い桜の花びらを前に、ため息を吐く。
下校時間なんて、とっくに過ぎていて、テスト期間中ということもあり、生徒たちは早くに帰宅している。
「玲奈と教室で2人かあ」
「呼び捨てにしないで」
「萌えるシチュエーションじゃねえ?」
「一人で燃えといて」
「桜も綺麗だしなあ」
クラスメイトの男は、腕を組んで一人頷く。
「あたしは、桜が嫌いなのよ」
「はあ?」
「どこが綺麗なの?薄ぺっらくて、地味」
「……それでも女?や、その前に日本人?」
「純粋な日本人だけど?外国人に見えるわけ?」
「や…あ、うん。玲奈はどっからどう見ても日本人だ。やー…あーうん…」
「なに?」
「玲奈はさ、その暗め茶色が似合うなーと思ってさ。一時期“人形”みたいで怖かったし」