エンビィ 【完】
“モンナンジュ”
そう看板のある洋風レンガ造りの店は、ひっそりとした小道の間にあった。
正直なところこんな、こじんまり、というか……辺鄙なところに連れてこられるとは思ってなかった。
ユキノに続いて入った店内は、オシャレな内装で。垢抜けたというよりは、落ち着いた、オシャレな空間は安らぐ。
「有名ホテルのほうが良かったかしら?」
向かい合った席に案内され、座った途端に言われた言葉。
それに、眉を顰めた。
「どこだって良かったわよ」
投げやりにそういえば、口許に弧を描く。
出会った当時と微々たる変化もない、赤にピンクの混じった髪。
波打つヘアスタイルは人形のよう。