エンビィ 【完】




また…黒。

ドレスではないけど、これも……伊織の貢物かしら…?


見定めるように、その黒のワンピースを見ていれば、あの時の…ホテルの窓に反射した伊織の表情や、あの締め付けられる哀愁の漂う声を、嫌でも思い出してしまった。


そんなあたしに変化に、気づいているのか、

いないのか。




「まあ、ここも一応うちの家絡みなのだけど」

「……聞いたことのない店ね」

「伊織お兄さまが個人的に投資しているお店ですのよ」



何食わぬ顔で、情報を差し出すユキノ。



……そんなことが世に知れ渡れば、ここ…辺鄙で落ち着く空間じゃあなくなるんじゃないの…?

そんなことを思いつつ、出されたフランス料理のオードブルをフォークで口に運んだ。



それにしても、この店――、



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