エンビィ 【完】
「まあ、お似合いね、そのブルーのドレス」
3人組のお嬢様を相手にしていると、いつの間にかすぐ横に、
知らないこともない女が立っていた。
「とても大人っぽくみえるわ」
美人じゃないけど、愛嬌のある顔。
「こんばんは、若葉さん」
残念だけど。
アンタのその可愛らしい顔に、
「若葉さんも"ものすごくお似合い"ですね!」
ブルーのドレスは不相応なの。
折角の素敵なドレスが、アンタの顔のせいで台無しよ?
若葉があたしの褒め言葉をどう受け取ったかは知らないが、満面の笑みでさらに近づいてきたと思えば―――「今日のシンデレラガール、私と玲奈さん、どちらかしら…?」理解に欠ける言葉を落す。
……シンデレラ、ガール…?
若葉の瞳があたしの瞳とかち合おうとする。
ほんの僅かに視線を下げ、自然と眉が寄るより先に――
「もちろん、若葉さんですわ」
すぐさまそう言いながら、若葉の瞳と正面からぶつけた。
若葉は少しだけ顔を苦く顰め、
「…つまらないわね」聞き取れない程度に呟いた。
――ハッ、
誰がアンタの思うツボになってやるもんか。
「残念だったわね」口許だけで嘲笑う。