エンビィ 【完】
「あたしは、噂どおり成金の娘で、しかも、父とは血が繋がっていない」
……ユキノ相手に、自分のダブーを告げている…。
あたしは――、
あたしは、誰一人として、自らこの禁忌を公言したことはない。
「でもだからって馬鹿にされるのも、屈辱的なことを言われるのも、耐えられない。それが我慢ならない…」
あたしはこのシンデレラのおこぼれストーリーが嫌い。
欲しいのは、本物だったから。
「だから……生粋のお嬢様以上のお嬢様になれるように…完璧を目指したはずだけど…」
彗星のごとく現れたのは、ユキノ。
「血、というよりはそのバックグラウンドには勝てない……あなた自身もすごいんだろうけど、あなたの家の存在は…あたしに敗北を与えるの」
ユキノは…その黒真珠の瞳で、あたしの話を真剣に聞いている。
酷いこと……言ってる、のかもしれない。
だって、あなたは家のおかげで輝けているの。あなたの力じゃないのよ、と言っているようなもの。